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2023.11.29 基礎知識

「攻めのIT」とは?守りのITとの違いや求められる理由、成功事例を紹介

自社のDX推進に向けて、「攻めのIT」というキーワードが気になる方もいるのではないでしょうか。「攻めのIT」とは、デジタルの導入により業務やプロセスの効率化を図るだけでなく、価値を創出するまでの変革を目指すものです。本記事では「攻めのITとは何か?」から、攻めのITを推進することで得られるメリット、効果について解説します。IT投資の検討材料としても生かせる内容をお届けします。

攻めのITと守りのIT

まずは、攻めのITと守りのITの違いについて説明します。この両者は進む方向は同じであるものの、最終的な目的において違いがあります。守りのITの目的が、業務プロセスの効率化、生産性の向上であるのに対して、攻めのITの目的は収益やサービス向上のための新たな価値創出です。以下で詳細に説明していきます。

攻めのITとは

攻めのITでは、ITを活用して既存のビジネスモデルや製品を変革し、新しい価値を創ることでマーケットにおいて優位性を確立して収益につなげることを目指します。攻めのITを成功させるためには、自社の企業文化の改革が必要な場合もあり、ビジネスモデルの大きな変更が求められます。

攻めのITの例としては、ビッグデータの活用による消費行動分析とマーケット分析結果に基づいたサービスの構築や、顧客ニーズに基づいた購買を可能にする販売チャネルのオムニチャネル化などが挙げられます。

守りのITとは

守りのITとは、ITを活用し、業務の効率化、生産性向上、コスト削減などを行うことです。攻めのITと異なり、既存のビジネスモデルを変えずに、今あるものをより良くしていくことを目的としています。

守りのITの例としては、個別部門や組織内での定型業務の自動化、ペーパーレスや電子申請システムでの効率化、タスク管理システムによる部署の垣根を超えた業務の見える化、オンライン会議による情報共有などが挙げられます。

攻めのITが求められている理由

ここからは、なぜ今攻めのITが求められているかについて解説します。

これまでの企業におけるIT活用は、作業の効率化やコスト削減を行うことが主流で、これは従前のビジネスモデルを踏襲して生産効率を向上させる「守りのIT」と呼ばれるものでした。

しかし、守りのITだけでは、デジタルを活用して効率化を実現しているだけにとどまり、競争力を高めて中長期的な成長をもたらすステップまで到達することができません。そのため近年では、その先のステージに行くために「攻めのIT」の必要性がうたわれるようになりました。

その背景としては、ビジネスの国際化、価値観の多様化が進んだことがあります。日本企業としては、これまで実施してきた「守りのIT」を継続しつつ、加えて「攻めのIT」に転換していかなければ、激しい競争を生き抜くことが難しくなってきたのです。

この攻めのITへの転換はDX(デジタルトランスフォーメーション)推進につながり、将来的にGDPを大幅に引き上げることが予測されています。経済産業省でも将来の成長、競争力強化のためにデジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを創出するDXを推進しています。2025年までにレガシーシステムを刷新しDXを推進した場合、2030年には実質GDPを130兆円押し上げられると発表し、DX推進をあと押ししています。

また、同じく経済産業省において、2015年よりDXに取り組む企業として選定されていた「攻めのIT経営銘柄」が、2020年から「DX(デジタルトランスフォーメーション)銘柄」として選定されており、新しいビジネスモデルにより競争優位性を生み出す企業を、国を挙げて応援する姿勢を打ち出しています。

経済産業省|DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(サマリー)(引用:2023年9月14日)
経済産業省|デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)(参照:2023年9月14日)

攻めのITへの4ステージ

「攻めのIT」に転換していくためには、以下の4つのステージを意識する必要があります。自社の現状がどのステージにあるのかを理解して、これから目指す方向を策定することが重要です。

1. IT導入前

まだITを導入していないステージです。情報伝達は電話も含めた口頭での連絡で行い、会計、営業、顧客管理などに帳簿を用いて業務を遂行しています。人の手による管理となるため整合性を取るために時間がかかります。過去のデータひとつ探すにしても、インデックスを頼りに一つひとつ見ながら紙に記帳されたデータを探す必要があります。

2. 置き換えステージ(デジタライゼーション1)

情報伝達手段を、口頭や書面からITツールに置き換えているステージです。業務連絡には社内メール、資料作成や経理処理などにWordやExcel、PowerPointなどOfficeソフトを使用し始めたIT導入の初期段階です。

3. 効率化ステージ(デジタライゼーション2)

ITツールを活用し、業務の効率化を視野に入れ始めるステージです。ここでは「守りのIT」を実践し始めます。例えば、業務フローに沿ったシステムを開発、活用して全体のプロセスを最適化し、製品・成果物の品質を高める、定型業務を自動化し、人員削減とともに効率化を実現するなどです。市場や売り上げの分析データをもとにした顧客のニーズ調査や、集客を目的とした自社サイトの構築などのデジタル戦略もこのステージに含まれます。

4. 競争力強化ステージ(デジタライゼーションのその先)

効率化ステージまででIT活用の基礎を固めたあと、売り上げ向上や新規顧客獲得など自社の競争力強化を目指す「攻めのIT」を実践していくステージです。このステージではDX推進、ITを利用して、顧客に価値を提供する仕組みを変えていくことを通し、企業価値を高めるといった取り組みを行います。データを活用した迅速な検証、それに基づく判断も求められます。

4つのステージを順次ステップアップしていくことが、最終ステージである「攻めのIT」に到達するために大切なポイントとなります。

経済産業省|攻めのITの活用指針(参照:2023年11月6日)

攻めのITの成功事例

企業で実際に実践された「攻めのIT」の成功事例4つを紹介します。他社がどのような戦略を取って攻めのITのステージまで進んだのかは、自社の方向性を決めるにあたり参考になるはずです。

A社(アパレル製造小売業)

大手アパレルメーカーのA社では、顧客がオンラインとオフラインの両方でシームレスなショッピング体験が得られるようなIT戦略に取り組んでいます。

なかでも特徴的なのが、自社スマホアプリ内での買い物アシスタントサービスの導入です。AIの自動応答システムによる商品情報や実店舗在庫の検索、コーディネートやサイズ選びのサポート、購入後の問い合わせ対応など様々なサービスを提供しており、これを通じて顧客の属性や購入データを取得することで更なるマーケティング戦略へとつなげています。ネットで購入した商品は店舗・配送どちらの方法でも受け取ることができる点も、顧客が希望するプラットフォームから購入できるオムニチャネル化を促進しています。

また、実店舗においても、RFIDタグを利用した無人レジを導入して待ち時間を減らすなど、顧客への新しい価値の提供を積極的に行っています。

Radio Frequency Identification(無線周波数識別)タグ。タグ内のデータを専用の機器で読み取り、モノの識別を行うシステム。

B社(総合機械メーカー)

老舗の建築機械メーカーB社では、人手不足、現職の高齢化などに悩まされる建築・土木業界を支援するために、建設機械、IoTから収集したデータを活用することで人員削減を可能とするシステムを開発しました。目視・確認作業の自動化、最適な作業員の投入人数の計算など、デジタルを活用したシステムにより、人手がかかるオペレーションを少なくしました。

C社(IT・通信業)

C社は、リモートデスクトップ、Windows リモートアシスタンスでの情報共有により、リモートサテライトオフィスでの勤務を可能にしました。信頼のおけるセキュリティサポート、無駄な利用を防ぐ柔軟なストレージサービス、保守、サポートまでをワンストップで提供するクラウドサービスAzureで、小売、金融、医療、行政と、さまざまな業界に新しい価値をもたらしました。

D社(食品メーカー)

D社は、AIを利用し商品のパッケージデザインを自動生成する独自システムを開発しました。これはAIにさまざまなデザインを学習させ、トレンドを反映しつつ独創的なデザインを生成させることを実現したシステムで、顧客への新たな価値提供だけでなく売り場の活性化にも寄与すると考えられています。

また、同社では、検討段階の商品パッケージ案が売り場に陳列された状態を再現するVR(仮想現実)技術も活用しています。これと前述のパッケージ自動生成システムを組み合わせ、より顧客視点を意識した商品開発の強化を図っています。

D社は5年連続で「攻めのIT経営銘柄」に選出されており、「稼ぐ力の強化」をするための成長エンジンとしてDXを位置づけ、積極的に推進しています。

攻めのITで企業の成長を実現

今後、企業の競争における優位性や価値を築けるかどうかは、「攻めのIT」を実践できるかが大きな鍵になるといってよいでしょう。そして、攻めのITのステージへ進むためには、その前のステージである守りのITの段階を経て変革につなげることが重要です。なぜなら、DX推進の際、攻めのITを実践するための土台となるのが、守りのITであるからです。

現在、多くの企業が守りのITのステージにとどまっています。守りのITのひとつである、PCの管理や運用を効率化するには、PCLCM(PCライフサイクルマネジメント)サービスの導入が有効な手段のひとつです。DRSでは、クライアントのさまざまなニーズに柔軟に対応可能なPCLCMサービスをご提供しています。

攻めのITへの対応のために守りのITの実践が困難という方は、ぜひDRSにご相談ください。

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